「・・・あら、わかめにもこんな可愛い頃があったのね」
「ああ、それは小学生の頃の写真ですね」
「犬飼ってたのね」
「ええ。もう死んじゃいましたけど。桜もちっていう柴犬でした」
「桜もち・・・まあ、にくよりはずっと可愛い名前よね」
「病気で死んでしまったとき、まだ4歳だったんです」
「そんなに若く・・・?」
「ある日突然、ひどく痩衰えてしまって。医者に見せたら1年も持たないって」
「・・・・・・」
「医者が治してくれないなら僕が治そうって、思い立ったんです」
「自力で?」
「ええ。ずっとやってた剣道も、何もかも捨てて、治す方法を調べ回りましたよ。でも結局だめだった。医者が治せないのに僕が治せるわけがなかった」
「・・・悪いこと、聞いたかしら?」
「いえ、聞いてもらえて嬉しいです」
「もしかして、それで獣医を?」
「ええ・・・もっと早く気付いてあげられれば桜もちは命を落とさずに済んだかもしれない。中1の頃だったかな、それからがむしゃらになって獣医になるための勉強を始めたんです。同じ悲しみを、もう、味わいたくなかったから」
「そんなことが・・・」
「でも、獣医になるのにひとつ大きな問題がありまして」
「何?」
「血が、だめなんです。どうしても」
「そういえばよくそんなこと言ってるわね」
「時々・・・夢を、見るんです」
「夢?」
「車の中で、目の前で、髪の長い女性が血まみれで倒れている夢を」
「・・・・・・?」
「それが何を意味するのか分からない・・・でも、そのせいで怖いんだ、血が」
「今でもよく見るの?」
「落ち込んでいるときとかは、ほぼ必ず」
「何なのかしらね・・・?ただの夢ではなさそうだけど」
「夢の中の僕はまだ小さくて、後部座席のチャイルドシートに乗っていました。もしかしたら過去のトラウマなのかもしれないけど、明確には何も覚えてない」
「・・・いつか、見なくなるといいわね。そして血も克服できたら・・・」
「ええ。原因解明できればいいんですけどね」
平八が獣医を目指す理由と、血が苦手な理由。
トラウマの話は後々書く・・・かな・・・←
あ、話し相手は出雲さんです(言わずもかな)
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