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女きょうだいに囲まれて暮らしていた所為だろうか。
昔から僕はクラスの中の女の子のグループの中に混じっていて、同性の友達、それも親友と呼べる存在はいなかった。
中学に入って、初めてそんな存在ができた。
男同士でしかできないような話もした。
楽しかった。
でも。
全部幻だった。
「なあ姫宮、お前いいとこの坊ちゃんなんだろ?このくらい払うなんてどうってことねえよな?」
「いや、僕の家は古いだけで裕福ってわけじゃ・・・」
「あんなでかい家住んどいて何ほざいてんだよ。ほら、いいからお前が金払えよ!」
「お酒と煙草なんて未成年が買える訳・・・」
「別にバレたりしねえよ。ほれレジ詰まってんだから早くしろ!」
「・・・僕、帰る」
「おい、ちょっと待てよ!」
そんなことがあった次の日、ロッカーの中がめちゃくちゃに荒らされていた。
「またこんな目に遭いたくなけりゃ5万円持って来いよ」
「・・・君が、やったの?友達だと思ってたのに」
「俺はお前の金にしか興味ねーの!ほれ姫宮の坊ちゃんよ、早く金出せよ!」
頭の中で。
何かが、切れる音がした。
気がついたら僕はそいつを殴ってて。
担任の先生に止められた。
こうなってしまえば、僕が「加害者」であいつが「被害者」。
ロッカーを自分で荒らして「お前がやったんだろ」と因縁つけられて殴られた。
あいつはそう言って、担任もそれを信じた。
僕は何も言わなかった。
否定するのすら面倒だった。
それからだろうか。
僕がひとりになったのは。
学校にいるのが辛すぎて。
だから、家が唯一の安息の地だと思っていたのに。
ある日、父さんの部屋に呼ばれ。
鏡内家の娘を、将来僕の嫁に迎えることになった、と。
そんな話をされた。
「許婚ってことですよね?僕に何の相談もなしに、勝手に決めたということですか」
「鏡内家の夫人がお前のことを大変気に入ってな、娘はお前以外の者と結婚させない、と」
「そんなこと言われても・・・鏡内家の娘さんなんて会ったこともないし、僕も彼女もいい迷惑でしょう」
「お前は姫宮家の長男だ。今は納得いかないだろうが、鏡内の娘はよくできた娘だ。お前も気に入るだろう」
「古いですよ。お家どうのとか、結婚がどうのとか。もう姫宮なんて何の力もないでしょう。そんなのに縛られて生きる気はさらさらないです」
そうだ。
確かに厳しく育てられてはきたけど。
将来を勝手に決められたことなんてなかった。
だから、家柄がどうであれ普通の家族なんだと、安心していたのに。
どうして今更・・・
「その婚約って取り消せないんですか」
「それは無理だ。鏡内家は姫宮家より強い力を持っているからな」
「・・・だからそういうのが古いって言ってるんだ!ふざけんな!」
勢いで、家を飛び出した。
・・・ああ。何も持ってきてないや。
でも、まあいいや。
学校にも家にも、僕の居場所なんてない。
お金もないし、力もないけど。
どうにか頑張れば生きていけるだろう。
どんなに惨めだろうが、僕の居場所は、僕が見つける。
結局あの後、父さんや姉さんに連れ戻された。
それから、家族との会話がなくなった。
というより、話しかけられても一切応えなかった、というのが正しいだろうか。
無視し続けているうちに、向こうからも話しかけて来なくなった。
父さんも、姉さんも、禰々も。
学校も家も居心地が悪い。
それから、寝る時以外は家に帰らなくなった。
学校にも行かなくなった。
代わりに、フリーターだと身分を偽ってバイトを始めた。
金さえあれば、家なんてなくてもどうにか生きていける。
そう思ったから。
バイトがない時は、繁華街をブラブラしていた。
そこで。
あの人に出会った。
「ねえ君ひとり?それとも誰かと待ち合わせかな?」
「ひとり・・・ですけど」
「じゃあさ、おねーさんと遊ばない?」
始まりは、軽いナンパ。
彼女は、赤峰 泰子と名乗った。
大学の1年らしい。
僕より5つも年上だ。
でも今の僕は無条件に「18歳のフリーター」だと偽っている。
人より背が高いことが幸いして、あまり疑われない。
泰子さんにも、そう自己紹介した。
嘘で塗り固められたプロフィール。
彼女は、それを疑うこともなく頷いた。
それから普通に茶でもしに行くのかと思ったら。
その行き先は、未知の世界で。
僕は13歳にして、女を知ることになった。
その後、僕らは携帯のアドレスを交換した。
「いつでも連絡ちょうだい。また遊ぼうね」
彼女は随分と軽い女のようで。
日常的に不特定多数の男と寝ているという話も聞いた。
それでも。それを知っても。
僕は、そんな彼女と付き合うことにした。
家に帰ったら、姉さんが怖い顔で待ち構えていた。
「平八、最近学校に行ってないようですわね」
久々に聞いた声が、これだった。
面倒だけど・・・無視するわけにはいかないのだろう。
「行ける訳ないでしょ・・・僕が暴行事件起こしたの知ってますよね?」
「あなたが理由なく誰かに暴行を加えるなど考えられませんわ」
「ただちょっとむしゃくしゃしただけですよ・・・色々ストレスも溜まってますしね」
「それだけじゃ・・・あら・・・?」
「何か」
「首元・・・赤いの、何なんです?」
・・・首元の、赤いもの。
それは紛れもなく・・・さっきの名残。
「虫に刺されたのかしら・・・?お待ちなさい、今薬を」
「違いますよ姉さん、分かりませんか?」
「何ですの?」
「僕・・・さっき、大学生のお姉さんと寝たんですよ」
「・・・・・・!」
信じられない、といった様子で、こちらを凝視する。
それは、明らかな軽蔑の眼差し。
「・・・嘘でしょ、だってまだあなた、中学生で」
「繁華街でナンパされてラブホ連れて行かれて、そのままね」
「・・・・・・っ!」
乾いた音が響く。
姉さんに、頬を叩かれたのだ。
「・・・最低。いつからそんな堕落したの」
「何とでも」
「大嫌い・・・!」
「別に姉さんに嫌われたって、なんとも思いませんから」
「・・・あなたなんて、弟じゃないわ!」
姉さんは、泣いていた。
それからまた、姉さんとの会話がなくなった。
家は妙に静かで、落ち着かない。
ああ。
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
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中学生時代の平八。くっらい・・・!
突発的に絵版で描いたからなんともgdgdである
あ、ちゃんと続きはありますよ。まだ書いてないけども((((
中途半端はすっきりしないので早めに書き上げたいのである
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